断片部
無骨でごつごつとした指を撫でるように触るのが好きでした。決して手に入らない、鈍みを帯びた冷たい手を、どうにかして、私の熱で温めてあげることができたらって。あなたは、唇を奪うのは許してくれたけど、指を絡めるのは許してくれなかったよね。あなたの瞳に冷え冷えとした霧がそびえ立っているようで、私はその霧を振り払ってあげることができなくて。あの夜、お互いの吐く息は白くて、その中であなたが囁いた愛の言葉は、まるで氷のヴェールのように、私の心を包んでくれたよね。そのとき、私の心はあなたの愛で、まるで凍傷のように溺れていくようだった。思い返してみると、あなたの心を私が捕らえる事なんてただ一つもなかったかもしれないけれど、それでも凍える夜に二人、指を絡めず抱きしめあった事は今でも覚えています。私の熱は、あなたに伝わりましたか?私の熱は、今でも残っていますか?
断片部
焦げる太陽の話をしようと思う。正確に言えば太陽に近づきすぎて焼き焦げてしまった男の話だ。その男は光を見続けて盲目になった。恐らく誰もに止められたに違いない。それを見続ける事は光を失う事も同義だった。なのに彼は何故光を見続けたのだろうか。いや、正確にはこう記すのが正しいのかもしれない。つまり、何故彼は太陽を見続けなければならなかったのか。いくらそれについて探ろうとも彼の脳を解剖して調べたところで結局のところ知ることは出来ないのだろうけれど、それでも、問いを立てた以上何らかの答えを出す必要がある。推論を重ねた上に私は一つの結論に達した。それはつまりこうだ、彼は知りたかったのだと思う。恐らく彼もそれを続ける事は光を永久に失う事が分かっていたのだと思う。だが彼には抜き差しならぬ見続けなければならぬ理由があったのだ。ゲームには降りる事のできるゲームと、降りられぬ類のゲームがある。思うにこれは彼にとっては後者の類のゲームだったに違いない。もしかすると彼はそれを辞めたがっていたのかもしれない、けれどそれは許されぬ事だったのだ。だから彼はそれを見続けた。そうする事で彼は知ろうとしたのだと思う。結果焼け焦げる事になろうと。それは知らねばならぬ事であったのだろうし、そうする以外の選択肢など彼には存在しなかったのだ。かくして彼は目を無くした。そして光を得た。決して潰えぬ光を。たとえどのような事が起ころうと、それは誰も奪えないものだ。彼はその手触りを、暖かさを、温もりを抱きしめて生きていくのだろう。確かに彼は目が見えぬ。だがそれがなんだというのだ?彼には光がある。燦々と頭上に輝き続ける太陽が慄然と存在するのだ。


