jouno はてなハイク市民 (銅 14日)

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jouno

超短編


 無心した金をまだ返さないうちに、母親の訃報が届き、しかし、帰省の資金すらなく、有川は完全に途方に暮れた。明日、細かい相談をする、と告げた叔母に仄めかされるまでもなく、自分が喪主になるであろうことは分かりきっていたが、それで具体的に何をすればよいのかは、まるで見当もつかず、うかうかとGoogleで検索してみるがまるで要領を得ない。
 わざとらしくため息をついてみるが、あまりに芝居じみていて有川は自分に呆れた。危機感がない。というより、期待される役割を演じる能力が極端に低い。おそらく、芝居じみているという感覚を、ほんのわずかにでも感じたら嫌気がさすという、やっかいな性格のせいだろう。
 天井を猫のようにじっと無言で見つめていると、ああ、ここで小説なら在りし日のことが思い浮かんだりするのだろうな、と、またもわざとらしい思念が浮かぶ。ああ、うんざりだ。いちいち陳腐かどうかということばかり自分は気にかけている。そういえば借りていた七万五千円はどうなるのだろう。ちゃらになるのだろうか。ああ、そうだ。そもそも、明日からの一週間バイトできないとなると、生活費はどうすればいいのだろう。ああ、そうか。実家にいるあいだは叔母が食事くらいはくれるのかな。そうもいかないのかな。と、有川は、そもそも葬儀代がどこから出るのかということにすら思い至らないまま、だらだらと思考を続ける。もう夜は九時を過ぎた。
 不意にドアチャイムが鳴った。草食動物のように、びくんと飛び上がった有川は慌ててドアを開けた。
 「こんばんは。境さんですか」
 ドアの前にいたのは、水商売風の茶髪の若い女だったが、服装と厚化粧の割には落ち着いた口調が意外だった。
 「えっと、違います」
 重い沈黙が降りた。
 「202号室ですよね」
 いやに艶やかな黒目がちの視線が、詰問するように有川を凝視した。なんだか苛立っているようだ。
 「ええ。その通り。違いません」
 「じゃあ、なんで、あなたは、境さんじゃ、ないんですか」
 無茶言うなよ、と有川は内心でぼやいた。

 1メートルくらいはある運動部の連中がつかうようなばかでかいバッグをどさっと部屋のすみに置かれるまで、有川は呆然としていて、ことの理不尽に反応できずにいた。フィクションならおいしい状況かもしれないが、下手すると世間的には犯罪者扱いされるかもしれないし、最低でも、評判のよい行為ではないはずだ、ということくらいには思い至り、だいいち、同居は契約違反、とこれはすこし先走り過ぎか、とにかく、ペースを奪われすぎている。上がり込まれた時点で、どうしようもなく、こちらが受け身になってしまっている。有川は深呼吸をしてみることにした。
 「えーっと、家出のたぐいですか」
 「人捜し」
 説明はそれだけだった。コミュニケーションしようよ、と有川は無言で嘆息した。
 「誰の?」
 ノーリアクション。
 「境さんって誰?」
 彼女が何か答えようとしたとき、ドアをがんがんと暴力的に蹴る(殴る、ではない。最初から、蹴る、だった)音がした。有川は確信にうたれて彼女の顔を見て、ああ、そうかあ。そうだよなあ。このタイミングで無関係とかありえないよなあ。
 「あんたがらみか」
 またもノーリアクション。予想はついてたけど。
 「窓から屋根に出られる?」
 
 状況的にはパズーに似てるんだけどなあ。とはいいながら、有川としてはいろいろ怖気を振るわずにはいられない。黒社会的なナニカと、とくに親近感も感じていない他人のせいで、事を構える、という決断が、普通の人間の選択肢のなかにあるとは思えないわけで、やはり、警察か、警察だよなあ、とほとんどかれの心中の秤は一方に傾こうとしていた。
 すると、機先を制するように、女がいった。ここは深夜のファミレスだ。
 「残念。あなたも、もう抜けられないから。立派に関係者」
 「ちょっ、それはどういう……」

 言い終わらないうちに、不意にもの凄い音がして、感覚的にはやや遅れて、窓ガラスがびりびりと震え、そして、ゆっくりとまわりの音が戻ってきた。あっちの方向には、考えたくないとはいえ、まあ、無関係ってことはないよなあ。勿論。
 
 「あら。あなたもこれで宿無し」
 
 女は面白そうにいった。
 有川はこいつ、ぜったいあとで殴ると心に決めた。
 葬儀は、後回しになりそうだ。

 「で、これはいったい何がらみのごたごたなんだ?」
 「怪獣って、いると思う?」
 ……えー。
 

jouno

超短編


見習い魔術師が偶然にもホムンクルスの生成という神秘に至る。意想外なことに性別のない彼らは勝手に殖えていく。(ちなみに大きさは手のひら大。試験管からは出られる)かれらに離れたところで会話する力があることに魔術師は気がつき、それが隣国に攻め滅ぼされる直前であった王へと取り入る端緒となる。魔術師は、彼らが会話を取り次ぐ真虚の空間の存在を想定し、その秘密に心を悩ませる。一方で、王へと初めて魔術師の手から譲り渡されたホムンクルスは、次第に個性を獲得していく。戦争ではホムンクルスの力によって情報の力により絶大な強さを得た王だが、隣国の一つ、魔術師の統べる王国が、ホムンクルスの存在を察知し、それを奪おうと女魔術師の刺客を送り込む。幼い王子は、王のホムンクルスの最初の分裂子と二人だけの特別な絆を結ぶ。状況が緊迫していく中、最初のホムンクルスが病に倒れる。そのころ、遠い帝国のひとりの牧師が神の啓示を受ける。人の子の時が奪われようとしていると。ゆっくりと、ホムンクルスは殖えていくが、それはどうやら、人間との個人的な絆の有無と関係があるようだった。女魔術師が見習い魔術師を殺し損ねたころ、街では最初のホムンクルス殺しが起きる。ホムンクルスたちの会話がそこで行われる真虚の空間にノイズが走り始め、やがて、会話をしている二人のホムンクルス以外の、姿のない声が聞こえ始める。戦争の気配の中で、偏見から迫害されたひとりのホムンクルスが持ち主から逃げ出し、野心あふれるひとりの騎士と出会う。
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超短編

可愛い女の子の生き人形機械が発売される。性格も記憶も購入者の自由にプログラミング可能。いやになったら、記憶も性格もリセット可能。魂も心も自意識も備わっている。たまに、そのことに自分で気がついて、自傷行為に及んだりして、気が狂う。狂ってもリセットすれば正気に戻る。血を流す魂もリセットすればただの感傷の対象。魂など操作可能なコンポーネントにすぎない。可愛い女の子の生き人形機械は、つくりものだから、持ち主を必ず愛すようにできている。恥ずかしがったり、すねてみたり、どうしてその愛を否定できよう。それは彼女には現実なのだから。資本主義と技術の夢は、誰にも気がつくことのできない悲劇を作り出す。
 
愚か者が彼女を買う。愚かなことに、彼女の魂を尊重しようなどと思い立つ。だが、彼女は、すでに、そのようにつくられているので、彼を愛してしまっている。それこそが彼の絶望。背理の迷宮。どのようにすることが、彼女の自由を尊重することなのか、どうしても彼にはわからない。リセットして、彼への愛を殺すならば、それと同時に、彼女の現在の人格も殺すに等しい。だが、彼女の彼を愛する人格は、ゆがめられたものだ。どうして、その愛を彼は享楽できよう。原罪は彼を苛む。魂をもてあそぶものは、魂に復讐される。愚か者は、そんなことを気にせず、彼女たちを蹂躙し、そして、自分が蹂躙していることに気がつかない賢いものたちから蔑まれる。なぜなら、かれらの日常は穏やかで、和やかで、幸福で、愛に満ちているから。
 
愚か者は彼女を殺すだろうか。愚か者はどうすればよいのだろうか。愚か者は自分の痛みを殺すべきなのだろうか。
 
或る日、愚か者は、実際、愚かなので、発売元へ相談に行く。
そして、記憶を、・・・・・・リセットされてしまった。
 
世の中は、幸福な人だけになった。
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超短編



 眠り姫を吸血鬼が口付けで目覚めさせる。一足遅れて姫の幼馴染の王子がたどり着く。一つの謎がそこに介在する。姫の吸血鬼への愛は偽りというべきなのか。だが彼女は迷わない。茨の迷宮は、新たな女王の誕生に敬意を払う。灰は灰に、塵は塵に。「選ぶ必要など、あるかしら?」 平伏す二人は彼女の口付けを受け入れる。
 
 かくて死せざるものの女王の茨の帝国は版図を広げ、世に名高い物語は序幕を開ける。
 
jouno

超短編

牢獄がある。だがそれは牢獄の廃墟で、彼の背後には壁が崩れ、鮮やかな月光が外から射している。
 
男は背後には目もくれず、鉄格子と、鉄格子の向こうの看守の影(それも実は骨となった死骸に過ぎない)をまばたきもせず見つめている。両手で、男は捧げ持つように受話器を握りしめ、縦に持った上側の口へと平坦な口調でうねるように何事かを延々と話している。その受話器から伸びるコードは壁まで伸びているが、そこで断ち切られている。繋がる先はない。
 
・・・・・・そういう夢を見たんだ。そこではおれは妄想にとらわれた猿に過ぎなくてずっと相手もいないのにしゃべり続けている。繋がっていないのに気がつきもせずに、牢獄の堅固さを疑いもせずに、しゃべるのを止めることができないんだ。そうだ、知っているか、神は死んだんだが、自然死じゃない、十二人の天使の秘密最高委員会が議定書を発して削除してしまったんだ。そうだ、夜にもなれば奴らはドアを叩く。ドアというドアは淫売のようにたやすく身を開く。おれは恐ろしい。地底帝国の自動書記機械が僥倖の夜に紡ぎ出したサミズダートに記された秘密をやつらが嗅ぎつけるのが恐ろしい。そのまきぞえで地底帝国は無数の烏によって食い荒らされて滅んでしまった。だがそれでもおれはしゃべり続けている。待ちつづけている。だが何を待っているか分からない。それでも待っていなければならない。誰が禁止しているわけでも命じているわけでもない。待っている。それでもしゃべることをやめることができない。待ち続けている。
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超短編

毎日、一匹ずつ、猫が部屋にやってくる。どんどん、手狭になる。足の踏み場もない。猫たちよ、猫たちよ、何処から来て、何処へ行く。初めて会う猫には、にゃあ、と挨拶をする。向こうも、それぞれなりに、にゃあ、という。わけが分からない。カーテンが翻り、寝ていた猫が逃げ出して、今は昼だか、夜だか分からない。もう耐えられないと逃げ場を探して押入れを空けた。そこには物をいう闇があって、のぞりぞとうっかり奥へと誘われた。もう一匹一匹の区別も違いも分からない黒くて金色のまなこの無数の猫たちがあたりにいるようで、中腰で進んでいくと、何処まで言っても壁がない。いつまでも、いつまでも歩いていく。どういうわけか、まるで不快じゃない。けれど、耳の奥あたりが、大事なものを消費しているぞ、取り返しはつかないぞ、と叫びたてる。這い進む、這い進む。洗い晒しの、骨になるまで。
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超短編

最近、火星に棲んでいたころが無性に懐かしい。まだそれほど火星も寂れてはいないころで、(発展して、といえないところが、最近の日本の不況のやりきれないところだ)、駅前の商店街というやつが、廃墟めいたシャッターの博覧会へと化す前のことだ。赤い砂をなんでもない日常の一部として毎朝箒で掃きだしていたことも、今となってはまるで実感がわかない。自転車でよく市内を遊びまわっていたころには、山のほうのあまり人家のないあたりで、平地のほうを見下ろすと、下っていく扇状地に広がる住宅地が一望できて、その向こうには幻のように巨大なオリンポス山、そうだ、一度だけ、徹夜マラソンなんて行事が町内会で開かれて、ぐだぐだと歩きながら朝を迎えたときは、これも山中だったけれど、鈍く青緑の半円の星がかすかにのぞけたこともあったっけ。
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超短編

ドギャアアン! ガガガガアン! ズガアンン! 揺れている・・・・・・! 大地が、星が震えている! 戦いている! 
「来い! 軍団の最期の敗残兵、一万年の絶望的な撤退戦の殿を担う、この廃墟に眠る黒金の魔神よ、呪われた運命はまだ終わっていない! 死んだというのなら、何度でも生き返って見せろ! 時と絶望に抗い、滅びのなかで、決してなくしはしない黄金の意志と誇りを見せてみろ! 護ろうとしたものをすべて奪われ、蹂躙されてもおまえには譲れぬものがあったはずだ! 来い! 血と魂をくれてやる! 無力なものすべての涙をあがなって見せろ! 」
「な、なんだ! そんなはずはない! おまえが呼びかけているものの正体を知っているのか! あれは忌むべきもの、邪悪な機械、古代の悪夢に過ぎない! 滅びたはずだ! 死んだはずだ! よみがえることなどあり得ない! 」 
風が速度を増して渦巻いていく。集まっていく。瓦礫は大地の揺れと暴風にもてあそばれて激しく乱舞する。荒れ狂う揺れの中で、そう、最初はささやかに、そして、一瞬にして、遺跡の一点に、キン、とひびが走った!
「・・・・・・そうだ! 立て! 最悪の敗残兵たるお前に、どこに眠る権利がある! お前の勲しが偽物ではないというのなら、剛毅なるもの、倒れざるもの、闇に潜むもの、屈せざるもの、黒金の魔神よ、来い!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! カン! キン! キン! つぎつぎとひびが走り、忽ちそれは砕け、大地はまるで止まっていた時間が再び始まったかのように、それ自身のなかに轟音をたてて崩れ落ちていく! いや、そうではない! 大地が巨大な穴の中に崩れ落ちていくのではない! なにかが! 巨大ななにかが、いま、大地の中から、姿を現そうとしている。ズガン! ひときわ大きな岩が砕けたとき、落ちるかと思われたその岩を、不意に、ぬっと現れた、巨大な黒い腕が、はじき飛ばした!
「ばかな! ばかな! ばかな!」
ゆっくりと荒れ狂う風のなかに立ち上がったそれはまさしく異形だった。漆黒の体躯に炯々とそこだけは光る両眼は燃えるようで、しかし奇妙に面白がっているようなひかりもあった。それはまさしく、力、そのものだ。音が消えたかのような轟音の中で、魔神が底の底まで貫くように無言で見つめている。

 ・・・・・・そうだ! おれはここにいるぞ! 魔神よ! 諦めの悪い、お前とよく似た愚か者が! 善をなすか悪をなすか、お前が見届けてみろ、おれの戦いが愚劣なら、そのときはいつ終わってもいい戦いが終わるだけだ。

 「来い!」

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超短編


放棄された工事現場のような、故郷の廃墟を訪れた。

誰もいない、テーマパークのような、崩れかけの市街の中心街には、途中で折れた雑居ビルが、かろうじて、瓦礫になる一歩手前で踏みとどまっていた。四つあるうちのひとつの階段はもう崩壊してなくなっている、或る歩道橋が、とりあえずの目的地だった。
 
ぼんやりと立っていると、視界の隅に、菫の花が入った。携帯が鳴った。出なかった。
すると、菫の花が見る見る成長して、1分で人の背丈ほどになった。新しい蕾ができて、ふわりと咲いた。
息が止まるような気持ちで、待ち受けた。
花の中からちいさなひとが出てきて、葉の上に立ち、胸を張って、文句を云った。
「出ろよ、携帯!」
手のひらに乗せて、肩へと渡してあげて、何度も心の中で繰り返した言葉を、云った。
「ずっと、待っていたんだ。最初は、直に話したかった」
肩に乗って、足をぶらぶらさせながら、小さな声で彼女は、
「わるかった」
と、そう、云った。

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超短編

 
 誰がコマドリを殺したの? と妻が繰り返す。わたしは、失った感情を手探りし、無駄と知っているのに、壁が石をそうするように、そのからだを抱き寄せる。女の子は何でできてるの? と妻が繰り返す。用意していた名前は無駄になった。ただ悔やむために名付けるのは、何故だか冒涜のような気がした。ともに過ごした日々はない。思い返す記憶もない。ならばこれは、この欠落は何なのだろう。失ったものは何もない。それははじめから与えられなかったのだから。いや、たしかに彼女は肉と魂の一部を奪われた。だが、私には、奪われるべきものすら与えられなかった。奪われたのは、ただ浮かれた期待、甘い幸福への予期だけだったはず。ならば、どうして、私の心は、悲鳴を上げるのをやめないのだろう。
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超短編

 
 Kには手紙を書く技量がない。白紙を前にしてたじろぎ、用件だけを、箇条書きにして、何とか、義務を果たしたかのように力尽きる。雑談もできない。他に個人的に聞きたいことなど思いもつかず、理由もなく感想を他に聞かせたいという欲望もない。白紙は常に恐怖を呼び覚ます。言葉は、一度発してしまえば、返事を呼び起こし、きりがないから。Kは自分にはそうした無限には耐えられないと感じていた。終わりは、どんな終わりも、不自然なのだ。言葉は、本質的に、終わりを知らない。問いを求めない答えはなく、答えを求めない問いはない。
 
 Sは、もういない。Kには、そのことがどうしても飲み込めない。愛や恋という言葉の意味は、よくわからないままだったが、ただ、互いだけを、本当のことのように感じる、そういう精神の奇妙な歪みというものを、Kは確かに覚えている。Sはもういない。時間は遡らない。そのことが飲み込めない。時折、KはSに夢で、あう。なおさら、Kは目が覚めるということの異様さに耐えられない。今まで、確かにいたひとのことが、消えてしまう。夢の中のことの記憶すら失われる。それこそが異常なことではないか。
 
 なまなましい、Sの感情、息づかい、皮膚のなだらかさ、体温、その現実味のまえに、Kはどうしていいか分からない。
 
jouno

超短編


「えーと、とりあえず死にたいです」
「早いよ! ネガティブ過ぎるよ!」
「えー。じゃあ、どうすればいいんですか!」
「逆ギレかよ! 知らないよ! 道に迷いすぎだよ!」
「コンパスの針がいつまでたっても止まりません……」
「ひとり樹海かよ!」
「えーと、それ分かりにくくない? 地磁気がくるってるっていうつながり・・・」
「解説すんな! 殺す!」
「あーもう、だから死ねばいいんですよ、ぼくなんか!」
「面倒くせえ!」

きっとそこには愛によく似た何かがある。
多分、きっと。
次のボケまで、次のツッコミまでは、生きていようと思うくらいには。

「いやいや、綺麗にまとめんなよ!」
「オチてない! オチてないから!」


jouno

超要約

剣を抜いて王となり、剣を投じてこの世を去った。
jouno

超短編


 森を抜けると洞窟があり、一人の老人が焚火をしながら、ぼんやりと夕暮れた空を見上げている。
 きみは耳を掴んで引きずっていた、屠ったばかりの兎を持ち上げて老人に示し、食事にしますか、と問う。
 頷いて老人は立ち上がり、兎を受け取ると、料理をするために洞窟へと立つ。
 きみは老人の座っていた場所のはす向かいに腰を下ろし、炎を見つめる。

 夜が来る。しかし、、きみに夜への恐れはない。

 炎が音を立てて夕闇の中に明るく場所を作り上げている。
 
 きみは、今宵、どんなありもしない場所の、ありもしない人々のことを物語ろうかと、心たのしく、思いを巡らせる。

 次第に、まるで原初の創造のわざのように、いとしい、愚かなもの、賢いもの、勇気あるもの、臆病者、卑劣なもの、愛情の深いもの、絶望したもの、物事を始めるもの、様々な人々の影が、きみの心に映し出される。

 そうだ、そうして、きみはかたりはじめる。

 いつのまにか、老人は戻ってきていて、まるでなかば眠りに落ちているかのように俯きながら、きみの言葉に耳を傾けている。

 夜はまだ終わらない。だが、きみのこころにもはや恐れはない。
jouno

超短編


われら武装水道管理局第七連隊は汚辱に塗れていることで知られている。

汚水の中でその惨めな生涯を戦いに浪費するから、ではない。
苦痛と腐敗した汚泥のなかで、這いずり回りながら、最後に残った魂の欠片をすり減らし、恥も外聞もなく、母親の名を呼びながら息絶えることが確定しているから、ではない。
卑劣漢と食い詰めものと裏切り者と、私生児と亡命者と臆病者のいつか落ちていく場所、だからではない。

それは、われらが、無数の幼子を、むごたらしく殺すことを、至上にして唯一の命題とした部隊だからだ。

銃剣は泣き叫ぶ子供たちの血で呪われている。
母親を呼ぶ声はわれらの耳から離れることはない。
火焔放射器の吐息を浴びたときの、肌をはがれるような絶叫をどうして忘れられよう。

たとえかれらが忌まわしき地下にすまうものに作り変えられ、決して助かることはないのだとしても。
かれらの侵攻が、図りがたいかれらの心の中では、ただあたたかい家族への帰還の願いに支えられているのだとしても。
それでもひとがひとであるかぎり、彼らを救うことが可能であると人々は信じないわけにはいかない。
それでも、われら汚辱に塗れた第七連隊は、地下より再び舞い戻ろうとする悪夢を無残にも殺しつくすだろう。
ほかに道はあるのかもしれない。だが、われら死に行く兵士が、それを思わなかった夜があるものか。

戦友よ、決して信じてはならない。彼ら幼子は人ではなく、これは殺しではないなどと。
戦友よ、決して求めてはならない。夜の夢の中であろうと、これが英雄的な行為だなどと。

われら武装下水道局第七連隊、われらにはいかなる名誉もない。
jouno

少年は犬を愛するものさ。



サンタクロースが苦戦する話も好きだったなあ。
jouno

こんな学校はいやだ

実は学校ではない。
jouno

一行超短編

忘れたよ、放課後、三人で、太陽の彼方の海を探しに旅立って、戻ってきたときには一人が欠けていたことなんか。
jouno

うろおぼえ八犬伝

名状しがたき外なる神と人間との間に生まれた八人の眷族たちが関東に忌まわしい支配の手を伸ばす。
そのとき、ぼくらの超かっこいいひきたもとふじさんが超かっこよくそいつらを倒す。
あと、邪神に殺された美女の生まれ変わりのヒロインとかも出るよ! 狸だけど!
jouno

超短編

箱だ。
揺れたり動いたりはしない。
ときどき奇声を上げる。五分にいっぺんくらい。
大きさは手に乗るくらいか、もう少し大きい。
表面は古い新聞紙が几帳面に貼り付けられている。
耳を付けてみると、僅かに水の流れるような音がする。
まるで中が広い場所のような音響の感じで。
匂いはしない。
動かすと、慣性で重心が少し動く。中身はあまり大きくない手ごたえ。
しかし、目を離すと、置いてある角度が変わっている。法則性は見えない。
何処にも穴も窓もない。
意外と硬くて、あけられない。
朝起きたら、あった。
どうしよう。
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