jouno

超短編

可愛い女の子の生き人形機械が発売される。性格も記憶も購入者の自由にプログラミング可能。いやになったら、記憶も性格もリセット可能。魂も心も自意識も備わっている。たまに、そのことに自分で気がついて、自傷行為に及んだりして、気が狂う。狂ってもリセットすれば正気に戻る。血を流す魂もリセットすればただの感傷の対象。魂など操作可能なコンポーネントにすぎない。可愛い女の子の生き人形機械は、つくりものだから、持ち主を必ず愛すようにできている。恥ずかしがったり、すねてみたり、どうしてその愛を否定できよう。それは彼女には現実なのだから。資本主義と技術の夢は、誰にも気がつくことのできない悲劇を作り出す。
 
愚か者が彼女を買う。愚かなことに、彼女の魂を尊重しようなどと思い立つ。だが、彼女は、すでに、そのようにつくられているので、彼を愛してしまっている。それこそが彼の絶望。背理の迷宮。どのようにすることが、彼女の自由を尊重することなのか、どうしても彼にはわからない。リセットして、彼への愛を殺すならば、それと同時に、彼女の現在の人格も殺すに等しい。だが、彼女の彼を愛する人格は、ゆがめられたものだ。どうして、その愛を彼は享楽できよう。原罪は彼を苛む。魂をもてあそぶものは、魂に復讐される。愚か者は、そんなことを気にせず、彼女たちを蹂躙し、そして、自分が蹂躙していることに気がつかない賢いものたちから蔑まれる。なぜなら、かれらの日常は穏やかで、和やかで、幸福で、愛に満ちているから。
 
愚か者は彼女を殺すだろうか。愚か者はどうすればよいのだろうか。愚か者は自分の痛みを殺すべきなのだろうか。
 
或る日、愚か者は、実際、愚かなので、発売元へ相談に行く。
そして、記憶を、・・・・・・リセットされてしまった。
 
世の中は、幸福な人だけになった。

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