jouno

超短編

 
 誰がコマドリを殺したの? と妻が繰り返す。わたしは、失った感情を手探りし、無駄と知っているのに、壁が石をそうするように、そのからだを抱き寄せる。女の子は何でできてるの? と妻が繰り返す。用意していた名前は無駄になった。ただ悔やむために名付けるのは、何故だか冒涜のような気がした。ともに過ごした日々はない。思い返す記憶もない。ならばこれは、この欠落は何なのだろう。失ったものは何もない。それははじめから与えられなかったのだから。いや、たしかに彼女は肉と魂の一部を奪われた。だが、私には、奪われるべきものすら与えられなかった。奪われたのは、ただ浮かれた期待、甘い幸福への予期だけだったはず。ならば、どうして、私の心は、悲鳴を上げるのをやめないのだろう。

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