jouno

超短編

最近、火星に棲んでいたころが無性に懐かしい。まだそれほど火星も寂れてはいないころで、(発展して、といえないところが、最近の日本の不況のやりきれないところだ)、駅前の商店街というやつが、廃墟めいたシャッターの博覧会へと化す前のことだ。赤い砂をなんでもない日常の一部として毎朝箒で掃きだしていたことも、今となってはまるで実感がわかない。自転車でよく市内を遊びまわっていたころには、山のほうのあまり人家のないあたりで、平地のほうを見下ろすと、下っていく扇状地に広がる住宅地が一望できて、その向こうには幻のように巨大なオリンポス山、そうだ、一度だけ、徹夜マラソンなんて行事が町内会で開かれて、ぐだぐだと歩きながら朝を迎えたときは、これも山中だったけれど、鈍く青緑の半円の星がかすかにのぞけたこともあったっけ。

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