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石岡良治『視覚文化「超」講義』

Eテレ「哲子の部屋」に石岡さんが出た時話していたのは、この本の要約だったのだな、と思い出しながら読んだ。

映画から、ネット動画につながっていく、映像を楽しむあり方の系譜をときほぐしながら、過去の蓄積が併置されて消費される現状を踏まえて、理論的考察と、ジャンル横断的な作品論を交えつつ、積極的に映像表現と向かい合うための姿勢を提案する紙上講義、といったところ。

批評理論、哲学、人類学など幅広い議論を踏まえて、映像文化について論じるための文献を網羅的に紹介していて、いろいろ勉強になる。

二次大戦後のアメリカ社会と映画産業について論じながら、メロドラマ映画の再評価がなされた系譜を、ダグラス・サークから、ファスビンダー、トッド・ヘインズへ、と辿るあたりの論述がコンパクトかつ密度が高いと思われ、自分が見落としていたあれこれを教えてもらった。

ガジェット、ホビーといったテーマについては、話題提供としては興味深いけど、議論としては素描段階といった印象。

いずれにせよ、本書が示す、アートとエンタテインメントという区分そのものを、レギュレーションの相違によるものとして相対化しながら、情報過多の時代に、単なる消費に終わらない生き方につながるような、表現、文化との付き合い方を模索するという姿勢は、読む人を勇気付けるものがある。

具体的な指針として今後どこまで通用するものかは別として。

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「何かが解きはなたれた気がした」

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